{登場人物はこちら}
最近の新築マンションというのは
無機質な「住居」というコンテナーを売るというのではなく
そのなかで営まれる、ライフスタイルを売る・・・
という感覚らしいです。
ちまたでも話題の大手不動産会社のマンションブランド
「パームシティ」のオーナーたちは
そんなわけで、入居前に
5~6のグループに分けて、ホテルのバンケットに集まり
お茶を飲みながら、お互いに挨拶をします。
私、棟方玲宇はシングルマザーで、絵本作家。
当時息子はまだ年中でした。
私の関心ごとは、やはり息子と同年代のお子さんを持つ家庭が
何世帯あるか・・・
やはり、このパーティーで一人出会いました。
それが、別棟ですが、同じ8階に住む
小金大河君と、そのご家族でした。
ここでも気づくべきだったのです・・・
子供たちは、自然とホテル宴会場の端っこに集まり
一緒に遊びはじめ、大河君と亮も早速お互いを見つけて遊んでいたので、
私たち母親もお互いに挨拶しました。
まず、とにかく馴れ馴れしいお母さんでした。
「お母さん(私に対して)、ぜったいオモロイ。わかるわ。オモロイやろ。」
私は、おそらく・・・
オモロイという印象は与えない、と思うのですが、
出会って1分後にこのように言われました。
大河君は、と言えば・・、
一緒に遊んでいる息子へ、大きな声で
「~しろや!」「アホか~やろ」と叫んでいるな・・・と思いつつ
私はその時にも、これが日本の子供の「普通」なのかなと
ちょっとがっかりしたのを覚えています。
私たち親が帰る様子を見せたので、遊びを切り上げた亮の腕をつかみ
「いやだいやだ」とゴネはじめていました。
腕を放そうとしないので、息子は困惑してしまいました。
初対面で言葉が荒くなったり、高圧的になるのは、
体の小さな子供によくある傾向だと思います。
一種の防御反応・・・とでも言いましょうか。
ですから、この時は、気にしないように、息子にも教えました。
息子も普段、楽しければ、決して親がどうしようが、
素直にさっさと片づけるわけではないのですが、
この時から、自分とコミュニケーションの「タイプ」が違うことを
感じ取っていたのでしょう。
やっと帰るのか、とばかりに、大河君に「バイバイ」と言っていました。
とにかく、これが、パームシティの住民の中で出会った
最初の同学年男子だったのですが・・・
私も、できるだけ馴染んで生活していこう
学者風を吹かせるのはやめよう、と
決めていたので、調子を合わせることにしました。
今思えば、小金綾音(大河君の母親)さんも、
すこし固い雰囲気の私を
無理やり「親しみやすい」と信じ込もうとしていたのだと思います。
それが「オモロイ」という言葉に表れているのではないでしょうか。
私と亮は、新居から、2駅しか離れていないところから
引っ越しました。
新居最寄りの幼稚園のバスが出ている範囲だったので
予め、幼稚園は年中の10月に転入しておいたのです。
同じ幼稚園に通う子供のなかで、女子には何人か
パームシティに引っ越す子もいました。
ですから、すでにご近所に知り合いがたくさんいました。
お友達もすでに、たくさんいる、ということです。
一番最初のお友達となった「大河君」は今通っている保育園で
そのまま、卒園まで通うことにしているとのことで・・・
息子には、大河君にお友達をたくさん紹介してあげなきゃね、
と話していました。
入居したら会いましょう!
そう言って、小金家とは別れました。
私と亮が入居したのが、4月の初め・・・
年長さんとしての生活が始まっていました。
新居の目の前にある公園で遊んでいた亮を迎えに行くと
男の子と遊んでいました。
見ると、その子は、息子の手をふんづけていました。
「!」私はびっくりして、「リョリョ!」と声をかけると
その子は、慌てて足を引っ込めました。
見ると、とても背が高く、私は、亮より年上だと思いました。
息子は、踏まれた手をさすりながら私に走り寄ってきて
「倫太郎君だよ。同じ幼稚園の同じクラスなんだ。」と
教えてくれました。
年長になって転入してきたのです。
それが、倫太郎君との出会いです。
私は、息子に
「大丈夫?何して遊んでたの?どうして手を踏まれてたの?」
なにかのごっこ遊びをしていたのか、息子は
遊具に寝そべって、手を倫太郎君に差し伸べるようにしていました。
その手を、立った姿勢だった倫太郎君が踏んでいたのです。
「おしゃべりしてた。」息子は答えました。
「あなた、何かいやなこと言ったんじゃない?だから手を踏まれたんじゃない?」
息子は
「そうなのかな・・・仮面ライダーごっこみたいにしてて、僕やられて倒れてたんだけど、踏まれてたの。攻撃だと思う。倫太郎君も仮面ライダーなんだよ。」
と、答えました。
「あなたも攻撃のとき、叩いたんじゃない?」そう思い、
息子が首を振るのをみるだけで満足しなかった私は、
念のため倫太郎君に尋ねました。
「倫太郎君、リョウに叩かれたりしてない?大丈夫?」
倫太郎君は首を横に振りました。
眉毛がしっかり上がって、口をすぼめています。
自分が被害をこうむっているかを尋ねられているので、
この表情は「しらばっくれている」のではなく、
被害が無いことを示しています。
息子は手を挙げてないのです。
「ごっこ遊びでも、本当に叩いたり、蹴ったり、踏んだりはやめとこうね。」
「また、うちにも遊びにおいでね。」
初めまして、だったので、私はこの時は、そのように言うにとどめました。
本当に、今思えば・・・なのですが
あまり良い出会い方を、どの子ともしていないなぁ、と思います。
この時私が、しっかり気づいていれば・・・
今の状態はなかったと思います。
息子とほかの子供のコミュニケーション方法や
倫理基準が違うのは
一重に息子には「キリスト教」という原理原則があり
また、どちらかと言うと、台湾式の育児をしているからなのであって
私があまり、うるさく言わなければ、
協調していけると思っていたのです。
私が神経質なだけで、これが日本の子供たちには普通なんだ
と、考えていたのです。
土台、きっと無理な話だったのでしょう。
入居してから、倫太郎君とは同じ幼稚園のお友達ということで
お付き合いが始まりましたが
逆に大河君とは疎遠に一年間過ごしました。
男子同学年が倫太郎君、大河君のほかにどれだけいるのかも、
よくわかりませんでした。
そんな、一年間でしたので
亮は倫太郎君と主に遊んで過ごすことになるのです。
息子と私のパームシティの悪夢
イジメにつながっていく不協和音は
こうやって、倫太郎君が、息子の手をふんづけて
始まったのです。
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「りんじゅのさと」は絵本作家 棟方玲宇(むなかたれい)のオフィシャル・ウェブサイトです。 「玲樹(りんじゅ)」とは歌人でもある棟方のペンネームです。 Welcome to the official website of Rei Munakata, a children's book creator.
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