映画の「おかし」
子供と映画に行くのが好きです。
子供の映画には全く興味がありません。
映画そのものはほとんど見ていません。
1800円の入場料で私が得るもの
それは、「真珠蛍と億千万の星」です
億千万の星
映画館の照明が落ちると
私はすぐに、傍らに目をやります。
すると、暗闇の中、
蛍のようにぽっと、子供のほっぺに真珠色の明かりが灯り
真珠蛍が姿を見せます。
そして
息子は、つぶらな瞳に億千万の星を携えるのです。
怖くて、私の手を握る小さな手には、汗がにじみ
感動すると、億千万の星から、小さな流れ星が流れ落ちます。
世界中のどんな絶景でも
この風景に勝るものはありません。
棟方という星とウツという星
ところで、棟方は時々ウツになります。
育児をするほとんどのママが、ウツに陥った経験があり
多かれ少なかれ、その「病」を持て余しているのではないでしょうか。
病と認識なさっておらず
ただご自分が至らないから、あるいは、気分の問題だと
思っていらっしゃるかもしれません。
棟方にとってウツとの関係は・・・・
「二つの衛星」です
自分という星がたどっている軌道と
別の軌道に「ウツ」星がめぐっていて
二つの軌道は時々合わさってしまって、
しばらくの間、付き合わなくてはいけないのです。
自分だけではない・・・でも我慢しなくてもいい
日本人の女性には
「子育てに悩んでいるのは自分だけではない」
と感じておられる方が多いようです。
この感覚は、とても知性にあふれ、健気な感覚です。
その通りなのです。
でも、それが、甘んじて耐えなくてはならないというわけではない
棟方は、そう考えます。
ここで耐えることは決して健気ではありませんし
賢くもありません。
「痛み」を経験することで得られる最大の宝は
他人と共感し思いやる力です。
これは「母」という生命体にとって
もっとも強い能力なのです。
自分の「痛み」に耐えてしまって
ましてや、やり過ごしてしまったら
同じ悩みを持つ人にも、その対応を期待してしまうでしょう。
「私は耐えたんだ。だから、貴方もこの重圧に耐えられるはず」
そして、助けを求めている人に手を差し伸べないでしょう。
さらに、自分を取り巻く他人の存在価値を
自ら下げることなんです。
困難におちいったなら、助けを求める義務がある
世の中にこれだけたくさんの人が
(あまりにもたくさんの人が)
存在するのは、互いの不足を補いあい
助け合うためにほかなりません。
たった一人で、痛みに耐えることは
その自然の条理に逆らうことです。
痛いのならば泣かなくてはならない。
私はいつも、そう子供に言います。
痛いのに泣かずに我慢して
周囲の人に、傷を気づいてもらえず
そのままその傷が化膿しても
それは誰のせいなのでしょう?
また、その膿んだ傷に蛆がわき
その虫が周囲の人々の生活を脅かすことになったら
それは、
誰のせいなのでしょう?
痛いなら、そのことを素直に訴えなくてはいけません。
自分の弱さを受け入れ、
他人に理解してもらいたい、と
発信しなくてはいけないのです。
「礼」この文字は
直訳すると「Politeness」"丁寧"さと訳しがちですが
実は「Communication」"コミュニケーション"という意味あいの方が強いのです。
他人の中の自分を自覚し
「礼」を尽くさなくてはいけません。
自分の弱さに気づいたなら
他人からの恩義を受けなくてはいけません。
それが、一人では生きていけない
「人」といいものに生まれ落ちた
私たちの義務です。
助けを求めないのは「無礼」である
先日、棟方を巻き込んで子供関連のトラブルを起こした
あるお母さまが、言いました。
「長い間誰にも言っていないけれど
実は自分はウツなのだ。
でも薬漬けにされたくないから
病院には行かない」
ウツを理由に自分の粗相を許してもらいたいなら
せめて、治療に努力する姿勢を示すのが礼儀です。
とんだ勘違いです。
ウツの治療薬
このエッセイの前半のノリだと
ウツの一番の治療薬は
「子供の笑顔だ」
となると期待されていたと思いますが
子供の笑顔には癒されますが
ウツを解消する特効薬ではありません。
ウツを解消する特効薬は
「感謝」の気持ちです。
棟方はシングルマザーで
夫と離婚し
夫に対して悶悶と恨みつらみをもったまま
二年ほど子育てをしていました。
貧困にあえぎ
こんな状況に追いやった元夫を恨みました。
子供を元夫のような人間には絶対にしない!
それが私の永遠のテーマです。
子供が少し大きくなって、映画が見れるようになりました。
私は貧困のなか、一生懸命、映画の券を買い
子供を映画へ連れていきました。
「仮面ライダー」の映画です。
初めての大画面
おなかにズンとくる重低音
3歳のちびっこにとって、それは
まさに、大興奮の経験だったのでしょう。
私は、そのとき、初めて
「真珠蛍と億千万の星」を目にしました。
私にとっての最大のストレスは
息子の言動の中に
元夫のカゲを見ることです。
たちまち、私の軌道に、ウツの軌道が添ってきてしまいます。
さて・・・・文章が長くなってきましたので
この続きは
また今度